創業200年企業が挑む、
新ブランド開発成功の舞台裏
石塚硝子株式会社さまは、創業から200年以上にわたり、ガラス製品を中心に事業を展開する総合容器メーカーです。このたび、独自処方の清掃剤「DEOGLA(デオグラ)」を配合した口臭ケア歯磨き『デオグラオーラテック』の新ブランド開発および新規事業化において、代表の堀が併走支援させていただきました。
- 本日はインタビューよろしくお願いします。改めて御社の事業についてお伺いさせてください。
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石塚硝子は創業当初からガラスを中心に事業を展開しており、ガラス瓶やガラス食器をはじめ、事業の多角化に伴い、さまざまな容器を取り扱うようになりました。
さらに、石塚グループとして新たにパウチの工場を立ち上げることで、あらゆる海外の容器にも対応可能な総合容器メーカーとしての地位を確立しています。
一方で、当社は容器事業だけでなく、機能材料分野にも取り組んでいます。主に抗菌材料を中心に展開しており、機能性を持ったガラス粉末を提供し、国内外で広く実績を積んでいます。
また、抗菌分野の技術を応用し、新たな可能性を模索する中で、消臭材料の開発に着手しました。その結果、消臭機能を持つガラスパウダーの製品化に成功し、機能材料事業のさらなる発展につながっています。
ー新たな事業を生み出すきっかけ
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長い歴史と既存事業の基盤がありながらも常に新しいチャレンジをされている印象です。
その中でもおふたりのチームの役割やミッションを教えていただけますか。 -
これまで展開してきた事業であるガラス、PET、紙といった既存の領域とは別に、これから100年、200年と続く企業として、新たな事業の柱を築こうというテーマが掲げられました。これが「新事業カンパニー」の設立の背景です。
私たちには、自社の既存リソースを活用してもよし、全く新しい技術や市場に挑戦してもよし、とにかく新たな事業を創出するという大きなミッションが与えられました。これこそが、私たちの最大の役割です。
その中で、抗菌剤を活用したり、新たに開発した消臭剤を用いたりして、新規事業の基盤となる製品を生み出すことや、これまで取引のあるお客様とともに新しい事業を立ち上げることなど、さまざまな可能性を模索してきました。
特徴的なのは、「これをやりなさい」と特定の指示がなかったことです。むしろ、「何でもいいから、新たな事業を生み出しなさい」という大きなテーマが掲げられ、それが私たちの挑戦の出発点となったのです。 -
非常にやりがいがありながらも難易度が高いミッションですね。
今回のデオグラという消臭剤を活かした製品開発プロジェクトはどのような経緯で立ち上がったのですか? -
当時、私たちは開発した消臭剤の材料を販売することに取り組んでいましたが、新しい素材を市場に広めるのは想像以上に難しく、営業面で行き詰まりを感じていました。
そんな中、当時の社長である下宮と「私たち自身で製品をつくってしまうのはどうか?」という提案をしたのです。
私たちが持っている材料は、主に容器や抗菌剤など、一般の消費者にはあまり知られていないBtoB向けのものが中心でした。しかし、営業活動を続ける中で、「最終製品を作り、直接消費者に届けるBtoCの事業にも挑戦してみたい」と考えるようになりました。そして、その転換点となったのが「オーラルケア(歯磨き粉)」というアイデアでした。これをきっかけに、新たな事業の方向性を模索し始めたのです。 -
同じタイミングで、外部の専門家の方々が「この材料は特定の分野で非常に高い機能性を発揮する」という示唆をしてくれたことは、私たちにとって大きな転機となりました。そこから、「では、歯磨き粉の分野に進出してみようか」と考えるようになり、単なる思いつきではなく、明確な方向性を持ったものづくりへと進むきっかけを得たのです。
今までは人体に触れるものや口に入る製品の分野には、意図的に踏み込んでこなかったと聞いています。そのため、当初は材料の販売が主軸であり、歯磨き粉という発想はありませんでした。
しかし、専門家の方々の示唆によって、「この分野でなら新たな可能性がある」と気づくことができました。
ー事業会社でブランドをつくった経験
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御社独自の強みである消臭剤をオーラルケアに活用するという大胆ですが確からしい方向が固まったのですね。
そんな中で、弊社にご依頼いただく前の背景や課題感について、どのような状況でしたか? -
ここは本当に悩みました。歯磨き粉にこの機能性素材を活用すれば優れた製品ができる、ということは理解できました。しかし、いざ自分たちが一般消費者向けに商品として販売するとなると、まずは商品やブランドとしての完成度を高める必要があります。とはいえ、これまでそうした経験がなかったため、「何から始めればいいのか?」という疑問が最初に浮かびました。社内で「どうしよう?」と話し合っても、誰も明確な答えを持っていませんでした。そこで、「知識や経験のある人からアドバイスをもらうしかない」というのが私たち全員の共通認識になりました。
そこから、「では、こうした商品の開発に詳しいプロフェッショナルはいないか?」と模索しました。 -
目的を達成するためのスピード感や外部人材の活用に目を向けるアイデアも素晴らしいですよね。
最終的に弊社を採用いただいた決め手はありますか? -
色々な方とお話をさせていただきましたが、最終的に堀さんにお願いすることに決めたのは、私たちがやろうとしていたことは、まだ商品名すら何も決まっていない状態からゼロベースで商品を作り上げていく、というものでした。
他の方々も、それぞれ部分的な強みをお持ちで、「こういう風に売ればいいのでは?」といったアドバイスをいただきました。しかし、ブランドの立ち上げから、最終的に消費者へ届けるまでの一連のプロセスを経験されている方はほとんどいませんでした。
その点で、堀さんは最も一貫した視点を持ち、私たちのやりたいことにしっかり向き合ってくれそうだと感じたのが、最大の決め手でした。 -
ブランドをゼロから定義し、商品を開発し、コミュニケーションまで一貫させ、最終的に売上に責任を持つ——こうした経験を持つ人は意外と少ないかもしれません。
私自身のキャリアを振り返ると、日本に本社がありブランドの上流意思決定が可能な環境にいたこと、ブランドマネジメント制のもとでブランドにかかわる全てのアクションの意思決定を行えたこと、さらにはブランドのリポジショニングを検討できるタイミングに恵まれたことなど、貴重な経験を積む機会がありました。
また、商品開発やプロモーションはあくまで手段の一つに過ぎません。最も重要なのは、ビジネス全体の目的やブランドの価値を見据えた上で、どの選択肢を取るべきかを包括的かつ一貫して考えること。この視点の重要性を改めて実感しています。
私がご支援に入らせていただいて印象に残っていることはありますか? - 商品の機能や成分が顧客にとってどのような価値につながるのか定義したことやそれに伴って情報開発や施策を展開したことですね。そもそもそういった進め方自体、私たちは知らなかったし、経験もなかったので、非常に印象に残っています。売るためには、ただ商品を作るだけでなく、顧客に対する価値をストーリーとして丁寧につくることが重要なんだと学びました。
- 私たちは、ひとつの商品を完成させ、ブランドとして確立するために何が必要なのか、そもそも消費者にどのように訴求すればよいのかという感覚があまりなかったんです。どんな要素が網羅されていると効果的なのか、そういったポイントを一つひとつ丁寧に教えてもらいました。決して押し付けるのではなく、「次はこれをやった方がいいのでは?」と、私たちの状況に合わせて提案をしてくれた。そのおかげで、ブランド立ち上げのステップがわからない私たちも、手取り足取り導いてもらいながら進めることができたと感じています。
ー商品への熱意が実績へつながる
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確かに、最初にお話を伺った際に感じた重要なポイントのひとつが、「デオグラ」という確かな成分があるにもかかわらず、それだけでは消費者にとって購入の決定打になりにくいという点でした。
マーケティングの観点で言うと、「デオグラという成分」というのはRTB(Reason to Believe:信じる理由)にあたるものの、それだけでは「だから買いたい」と直結しにくいんですよね。そこで、単なる成分の説明ではなく、消費者にとって理解しやすく、共感を生むような情報開発やストーリーテリングが必要だと感じました。
よりベネフィットにフォーカスした価値づくりを行うことで、消費者にとって「自分にとって良いものだ」と感じてもらえるようにしたんです。そういったストーリーを設計していくことが、結果的に商品の魅力を最大限に引き出すことにつながったのではないかと、改めて思い返しますね。
あとはロゴ、ネーミング、パッケージデザインもこだわりましたよね。私から実績のあるアートディレクションのパートナーもアサインさせていただきました。クリエイティブ制作の進行はいかがでしたか? -
コンセプトをしっかり立てて進めることの重要性に気づけたのは本当に大きな学びですね。
過去の反省として、ブランドに対する熱意や方向性をしっかりと伝えられなかったことが結果として、デザイン会社に丸投げする形になってしまったんですね。デザインを依頼する際には、最初にしっかりとしたオリエンをしないと、最終的に自分たちの意図とズレが生じることもあります。
そのためにも、ブランドのコンセプトや価値観をきちんと共有し、ディレクションすることが重要だと改めて気づきました。
今回サポートいただきながら、コンセプトに基づいて具体的な方向性を提案いただいたことが、結果としてプロジェクトを円滑に進めるために欠かせない部分なんだなと思います。 -
たしかにオリエンやディレクションも重要ですが、みなさんがもっている熱意や商品の理解、顧客理解が事業やマーケティングにおいて最も重要だと思います。ここが丸投げでは、どうしてもエンドユーザーにも気持ちが伝わらないですし、しっかりと関わることで初めて、効果的なマーケティングが実現できるのだと思います。
そして、私がご支援するクライアントに対しても、そうした熱意を持って向き合っている姿勢が成功の鍵になっているんですね。チーム全体がその思いを共有していることが、成果を生み出す力だと感じます。
では、デオグラオーラテックの直近の成果についてもお伺いさせてください。 -
店頭での販売が好調で2,600店以上に配荷が拡大しています。
またクラウドファンディングでは目標金額の702%の応援購入総額となり、多くの支持を得ることができています。
ーフェアなコミュニケーション
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発売から短期間かつ新規参入でここまで配荷が拡大しているのはすごいですよね!
最後に弊社をおススメするとしたらどのような企業さんが合いそうですか? - ブランドをゼロから立ち上げる際、右も左もわからない状況から始めるのは非常に大変です。良い商品は持っているものの、売り方がわからないという企業は多いと思います。そういった企業にこそ、堀さんはぴったりだと思います。
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堀さんのスキルや能力についてはすでにお話ししましたが、私はその人柄についても少し補足させていただきたいと思います。外部からコンサルタントとして入ることは、やはり難しい部分があると思います。特に年上の方や役職の高い方々とのコミュニケーションには慎重さが求められます。私たちのように、創業200年の比較的固い企業文化の中ではコンサルタントに対して不安や抵抗を感じることもあります。
しかし、そんな私たちでも、安心してコミュニケーションを取ることができ、お任せすることができました。それは、堀さんが物腰柔らかく、そしてしっかりと進むべき方向を示してくださるからだと思います。多くのコンサルタントの方々と接した中で、うちと相性が良い方は少ないと感じます。おそらく、大手企業での経験が生きているのだろうと思いますが、どの会社の方とも上手くやっていける人柄だと強く印象に残っています。 -
こちらこそ御社の熱い想いをぶつけていただいたからこそ良いものができたと思っています。
引き続き、デオグラブランドの拡大を応援しています!